「それと、もうひとつお願いがあるんだけど……」

 え? また別のクマ作って欲しいの? と思い航介を見ると、顔を赤くしてやけにはにかんだ表情をしている。

「俺と付き合ってください」
「えっ」

 航介は口に手を当てながら俯いた顔から上目遣いに私を見た。
 その視線と重なると、萎んだ鼓動が再び激しく脈打ち始めた。

「あの、ね。そのクマ特別仕様なんだ」
「どういうこと?」
「背中にハート背負ってる」
「ハハッ、ほんとだ可愛い」
「でしょ」

 お互い照れくさくて、少し沈黙が流れている。航介は頬を赤く染めながら、また私を見つめた。

「好きです」
「うん……私も」

 恥ずかしくて緊張してドキドキして嬉しくて。
 お互い視線を合わせて、微笑みあった。

 手の中に収まる小さなハート。

 春の予感は、温かな手のひらに重なった――。


fin