井川なぎさは、トバ国王太子に婚約破棄された。こんな私は悪役令嬢!そうして眠りにつかされ、箱に入れられた。魔法船アンドロメダに入れられ、魔族の国ねのかたすくにに流された。魔王スサノオに婚約者として贈られたのだ。それは夏場だった。
魔王スサノオとはトーセアイランド八雲神殿内の魔法の鏡で通信していた。そこで、なぎさは、魔王スサノオと対面した。なぎさは、スサノオのやさしさに感銘を受けた。スサノオに一目ぼれした。スサノオに結婚しなくともいい、城で養ってくれると言われた。でももしよければ、婚約してほしい、と言われた。
なぎさは承諾した。そうして、ぜひキスで起こしてほしいと、頼んだ。スサノオは承諾した。
なぎさが目覚めると、そこには男の顔があった。なぎさはキスで起こされたのだ。男の顔が離れた。男は荒々しいが、りりしい顔立ちをしていた。切れ長で黒い目をしていた。フェイスラインはシャープ。黒髪で長髪であった。ひょっとして魔王スサノオ?なぎさは震えた。
「怖がるな」
と、スサノオは言った。荒々しい声だ。
「妃になる女性に何もしない」
と、スサノオ。
スサノオは上半身裸であった。細身だが骨ばって筋肉質であり、大柄であった。腕は細く筋肉質で血管がはしっていた。
「さあ」
と、スサノオはなぎさの手を取った。どれくらい眠っていたのだろう。なぎさは、なんとか体を起こした。
「立てるか」
と、スサノオ。
なぎさは立とうとした。
「あ」
なぎさをスサノオが支えた。
「大丈夫か」
スサノオはなぎさをお姫様だっこした。
「え」
と、なぎさ。
「無理をするな。長く眠っていて、なまっているのだろう」
そう言って、スサノオはなぎさを箱から出した。スサノオはそのままその部屋の出口に向かった。部屋は広く、壁にはランプがあって明るかった。また魔法で涼しくなっていた。出口の扉は両開きで、開いていた。スサノオは出口を出た。廊下が続いていた。両側にはランプの灯がともっていた。ランプの灯がスサノオの美しい顔を照らした。スサノオは階段を上った。頂上へついた。
「外へ出るぞ、なぎさ」
「はい」
スサノオは扉を開けた。
「あ」
と、なぎさ。
「大丈夫か」
階段の上方から日が差したのだ。
「ずっと眠っていたため、日の光になれぬのだ。じきなれる。安心しろ」
「はい」
と、なぎさ。
外に出た。日がまぶしい。なぎさは、手を顔の前にかざした。空は抜けるように青かった。暑いが、そよ風が吹いていて気持ちいい。スサノオはゆっくりと歩いて行った。そうして舳先にたった。
「うをお」
遠くから歓声が聞こえた。なぎさはおびえた。
「安心しろ。皆君を歓迎しているんだ」
なぎさが遠くを見ると、砂浜に異形のものたちが集っていた。
「なぎさ」
スサノオの荒々しい声だ。
「は、はい」
「しっかりつかまれ」
「え」
「これから飛び降りるのだ」
「え」
「いいからしっかりつかまれ」
「はい」
なぎさは、スサノオにつかまった。スサノオは舳先から飛び降りた。
わあ。
スサノオは海岸に降り立った。ばしゃーん。海の水が跳ね上がった。海の中をスサノオは歩いた。前にメイドさんの姿をした女性がいた。おかっぱの青い髪。天使のように翼が生えている。
「おおおおおお」
と、メイドさんの恰好をした女性。
「エミリア」
と、スサノオ。
「その方が井川なぎさ様ですね」
「そうだ」
と、スサノオ。
エミリアと呼ばれた女性はなぎさを見つめた。
「お美しい」
なぎさは赤くなった。
「それに強い魔法力を感じます」
と、エミリア。
「そうだろう」
と、スサノオ。
「わたくし、スサノオ様の家政婦長のエミリア・スワロウと申します」
エミリアはにこにこしていた。
「あの、初めまして」
と、なぎさ。
「エミリア、なぎさは疲れている」
「ああ、そのようですね。もともと強い魔法力の持ち主ですから、栄養をつければ、元通りになるかとお」
「そうだな」
「はい」
エミリアは両手を前へ出した。すると、いきなりグラタンを載せるような皿が現れた。スプーンがのっている。
「今日のために一生懸命おつくりしました」
と、エミリア。エミリアはスプーンを取った。皿の中のものをすくった。それを自分の口元にやった。そうしてふうふうした。
「では、お嬢さま、あああああん」
と言って、エミリアはスプーンをなぎさの口に近づけた。
「なぎさ、安心しろ。エミリアがこころをこめて作ったおかゆだ」
スサノオはいった。
なぎさは口を開けた。エミリアがスプーンをなぎさの口の中へいれた。なぎさはおかゆを口に含んだ。とてもおいしかった。喉を通り、おなかへ行った。しばらくすると、力がみなぎってくるのを感じた。
「あのう」
と、なぎさ。
「立てるのか」
と、スサノオ。
「はい」
なぎさは、立った。生ぬるい海の中に足を浸した。
「歩けるか」
と、スサノオ。
なぎさは、そうっと足を踏み出そうとした。
「あ」と、なぎさは倒れそうになった。スサノオがなぎさを支えた。
「まだ歩くのはご無理のようですね」
と、エミリア。
「ああ」
とスサノオは言って、なぎさをお姫様だっこした。と、そのとき、後方の海が騒いだ。スサノオが振り返った。イルカ?現れたのは女性だった。いや。半分魚、人魚?
女性が数人いる。あとからウエーブした青い髪が長い美しい女性が現れた。ティアラをのっけている。
「おお、マーメイド族の女王様、なんとお美しい。」
と、エミリア。
マーメイド族の女王?
「女王」
と、スサノオ。
髪の長い美しい女性が近づいてきた。女性はお辞儀をした。
「スサノオ様」
女性はなぎさを見た。
「そちらが人間界から送られた婚約者ですね」
「初めまして、井川なぎさと申します」
と、なぎさは言った。
「お初にお目にかかります。マーメイド族の女王でアテナと申します」
と、女性。
「まあ、お美しい」
「おきれいですこと」
と、ほかのマーメイドがなぎさを見て口々に言った。なぎさは、赤くなった。
「ほんとにお美しい。それに魔法力もお強い」
と、女王。
「ええ」
と、エミリア。
女王はスサノオを見た。
「スサノオ様、このようなお美しく強い婚約者がまいったとあっては、私共がさしあげた婚約者がないがしろにされるのではないか、と思いましてね」
「そのようなことはございません」
と、エミリア。
「それはわからん」
と、スサノオ。
「まあ、やはり」
と、マーメイドの女王。
「それでは、私共も、あなたにお仕えできませんね」
「それは困る」
「では、私共の差し上げた婚約者をお忘れなく」
「・・・・・・ま、まあ」
と、スサノオ。
「王女様あ、マーメイドのお姫様ならわたしくが責任をもってごめんどうをみております。この度お見えになったお嬢さまのお世話もしますが、決してマーメイドのお姫様をないがしろにすることはありません」
「お世話するお嬢さまが増えて、ご負担では」
「いえ、お世話するお嬢さまが増えて、エミリアはうれしゅうございます」
「しかし、わたくしどもが差し上げたあれには手をやいているでしょう?なにせあれはわがままで」
「いえいえ、あんなかわいいお嬢さまはございません」
「俺も彼女が気に入っている」
と、スサノオ。
「まあ、それはよかった」
「なかなか気骨のあるやつだ」
とスサノオ。
「そういう見方もあるのですね」
「お嬢さまならお見えになっていますが」
と、エミリア。
「いえ、あのこは会いたくないでしょうから」
と、女王。
「まあ、そうですね」
と、エミリア。
女王はなぎさを見た。
「お立ちできないのでしょうか」
「ああ」
と、スサノオ。
「魔法力のお強い方ですから、今晩の宴で皆で飲み食いして騒げば、お立ちになれると思います」
と、エミリア。
「そうでしょうね」
と、女王。
「では、仲間たちのとこへ行くとするか」
と、スサノオ。
「では、アテナ様」
と、エミリア。
「ごきげんよう」
と、アテナ。
「では、行くか」
と、スサノオ。スサノオはなぎさを抱きかかえたまま、みんなの方へ向かった。
魔王スサノオとはトーセアイランド八雲神殿内の魔法の鏡で通信していた。そこで、なぎさは、魔王スサノオと対面した。なぎさは、スサノオのやさしさに感銘を受けた。スサノオに一目ぼれした。スサノオに結婚しなくともいい、城で養ってくれると言われた。でももしよければ、婚約してほしい、と言われた。
なぎさは承諾した。そうして、ぜひキスで起こしてほしいと、頼んだ。スサノオは承諾した。
なぎさが目覚めると、そこには男の顔があった。なぎさはキスで起こされたのだ。男の顔が離れた。男は荒々しいが、りりしい顔立ちをしていた。切れ長で黒い目をしていた。フェイスラインはシャープ。黒髪で長髪であった。ひょっとして魔王スサノオ?なぎさは震えた。
「怖がるな」
と、スサノオは言った。荒々しい声だ。
「妃になる女性に何もしない」
と、スサノオ。
スサノオは上半身裸であった。細身だが骨ばって筋肉質であり、大柄であった。腕は細く筋肉質で血管がはしっていた。
「さあ」
と、スサノオはなぎさの手を取った。どれくらい眠っていたのだろう。なぎさは、なんとか体を起こした。
「立てるか」
と、スサノオ。
なぎさは立とうとした。
「あ」
なぎさをスサノオが支えた。
「大丈夫か」
スサノオはなぎさをお姫様だっこした。
「え」
と、なぎさ。
「無理をするな。長く眠っていて、なまっているのだろう」
そう言って、スサノオはなぎさを箱から出した。スサノオはそのままその部屋の出口に向かった。部屋は広く、壁にはランプがあって明るかった。また魔法で涼しくなっていた。出口の扉は両開きで、開いていた。スサノオは出口を出た。廊下が続いていた。両側にはランプの灯がともっていた。ランプの灯がスサノオの美しい顔を照らした。スサノオは階段を上った。頂上へついた。
「外へ出るぞ、なぎさ」
「はい」
スサノオは扉を開けた。
「あ」
と、なぎさ。
「大丈夫か」
階段の上方から日が差したのだ。
「ずっと眠っていたため、日の光になれぬのだ。じきなれる。安心しろ」
「はい」
と、なぎさ。
外に出た。日がまぶしい。なぎさは、手を顔の前にかざした。空は抜けるように青かった。暑いが、そよ風が吹いていて気持ちいい。スサノオはゆっくりと歩いて行った。そうして舳先にたった。
「うをお」
遠くから歓声が聞こえた。なぎさはおびえた。
「安心しろ。皆君を歓迎しているんだ」
なぎさが遠くを見ると、砂浜に異形のものたちが集っていた。
「なぎさ」
スサノオの荒々しい声だ。
「は、はい」
「しっかりつかまれ」
「え」
「これから飛び降りるのだ」
「え」
「いいからしっかりつかまれ」
「はい」
なぎさは、スサノオにつかまった。スサノオは舳先から飛び降りた。
わあ。
スサノオは海岸に降り立った。ばしゃーん。海の水が跳ね上がった。海の中をスサノオは歩いた。前にメイドさんの姿をした女性がいた。おかっぱの青い髪。天使のように翼が生えている。
「おおおおおお」
と、メイドさんの恰好をした女性。
「エミリア」
と、スサノオ。
「その方が井川なぎさ様ですね」
「そうだ」
と、スサノオ。
エミリアと呼ばれた女性はなぎさを見つめた。
「お美しい」
なぎさは赤くなった。
「それに強い魔法力を感じます」
と、エミリア。
「そうだろう」
と、スサノオ。
「わたくし、スサノオ様の家政婦長のエミリア・スワロウと申します」
エミリアはにこにこしていた。
「あの、初めまして」
と、なぎさ。
「エミリア、なぎさは疲れている」
「ああ、そのようですね。もともと強い魔法力の持ち主ですから、栄養をつければ、元通りになるかとお」
「そうだな」
「はい」
エミリアは両手を前へ出した。すると、いきなりグラタンを載せるような皿が現れた。スプーンがのっている。
「今日のために一生懸命おつくりしました」
と、エミリア。エミリアはスプーンを取った。皿の中のものをすくった。それを自分の口元にやった。そうしてふうふうした。
「では、お嬢さま、あああああん」
と言って、エミリアはスプーンをなぎさの口に近づけた。
「なぎさ、安心しろ。エミリアがこころをこめて作ったおかゆだ」
スサノオはいった。
なぎさは口を開けた。エミリアがスプーンをなぎさの口の中へいれた。なぎさはおかゆを口に含んだ。とてもおいしかった。喉を通り、おなかへ行った。しばらくすると、力がみなぎってくるのを感じた。
「あのう」
と、なぎさ。
「立てるのか」
と、スサノオ。
「はい」
なぎさは、立った。生ぬるい海の中に足を浸した。
「歩けるか」
と、スサノオ。
なぎさは、そうっと足を踏み出そうとした。
「あ」と、なぎさは倒れそうになった。スサノオがなぎさを支えた。
「まだ歩くのはご無理のようですね」
と、エミリア。
「ああ」
とスサノオは言って、なぎさをお姫様だっこした。と、そのとき、後方の海が騒いだ。スサノオが振り返った。イルカ?現れたのは女性だった。いや。半分魚、人魚?
女性が数人いる。あとからウエーブした青い髪が長い美しい女性が現れた。ティアラをのっけている。
「おお、マーメイド族の女王様、なんとお美しい。」
と、エミリア。
マーメイド族の女王?
「女王」
と、スサノオ。
髪の長い美しい女性が近づいてきた。女性はお辞儀をした。
「スサノオ様」
女性はなぎさを見た。
「そちらが人間界から送られた婚約者ですね」
「初めまして、井川なぎさと申します」
と、なぎさは言った。
「お初にお目にかかります。マーメイド族の女王でアテナと申します」
と、女性。
「まあ、お美しい」
「おきれいですこと」
と、ほかのマーメイドがなぎさを見て口々に言った。なぎさは、赤くなった。
「ほんとにお美しい。それに魔法力もお強い」
と、女王。
「ええ」
と、エミリア。
女王はスサノオを見た。
「スサノオ様、このようなお美しく強い婚約者がまいったとあっては、私共がさしあげた婚約者がないがしろにされるのではないか、と思いましてね」
「そのようなことはございません」
と、エミリア。
「それはわからん」
と、スサノオ。
「まあ、やはり」
と、マーメイドの女王。
「それでは、私共も、あなたにお仕えできませんね」
「それは困る」
「では、私共の差し上げた婚約者をお忘れなく」
「・・・・・・ま、まあ」
と、スサノオ。
「王女様あ、マーメイドのお姫様ならわたしくが責任をもってごめんどうをみております。この度お見えになったお嬢さまのお世話もしますが、決してマーメイドのお姫様をないがしろにすることはありません」
「お世話するお嬢さまが増えて、ご負担では」
「いえ、お世話するお嬢さまが増えて、エミリアはうれしゅうございます」
「しかし、わたくしどもが差し上げたあれには手をやいているでしょう?なにせあれはわがままで」
「いえいえ、あんなかわいいお嬢さまはございません」
「俺も彼女が気に入っている」
と、スサノオ。
「まあ、それはよかった」
「なかなか気骨のあるやつだ」
とスサノオ。
「そういう見方もあるのですね」
「お嬢さまならお見えになっていますが」
と、エミリア。
「いえ、あのこは会いたくないでしょうから」
と、女王。
「まあ、そうですね」
と、エミリア。
女王はなぎさを見た。
「お立ちできないのでしょうか」
「ああ」
と、スサノオ。
「魔法力のお強い方ですから、今晩の宴で皆で飲み食いして騒げば、お立ちになれると思います」
と、エミリア。
「そうでしょうね」
と、女王。
「では、仲間たちのとこへ行くとするか」
と、スサノオ。
「では、アテナ様」
と、エミリア。
「ごきげんよう」
と、アテナ。
「では、行くか」
と、スサノオ。スサノオはなぎさを抱きかかえたまま、みんなの方へ向かった。