聖女のテントから奇声が聞こえ、王子と慌てて駆けつけると、聖女がベッドの上で手を広げて立っていた。まだ大声で何か叫んではいるが、目をつぶっているから、寝てるのだろうか?

「どうした?大丈夫か?」

王子が声をかけると、私達に気づいたのか、聖女は背中を向け、恥ずかしそうにしている。

今のはなんだったのか、いくら考えてもわからない。

その後も、聖女の言動には奇怪なものが多過ぎて、愉快ではあるが、戸惑いも隠せない。前世の影響かとも思ったが、先代の聖女は至って普通だった。

「ということで、そろそろ森を出ましょうか」

さっきも同じことを言っていたが、どうも話が噛み合わない。

ということでとは、どういうことだろうか?

「森を出るのってどれくらい時間かかるの?どうせレオ様達の国まで結構かかるんでしょ?そしたら話は歩きながらボチボチで良くない?」

「そうだな、俺の足でも森を出るのに一週間。動物の攻撃をかわしながらになるから、直線距離でもそこそこかかるな。聖女と教皇が一緒だと10日はかかるとみておいた方がいいだろう」

「えー結構かかるんだね?でも森の動物達、私に攻撃してくるの、想像できないけど?」

「ああ、確かに。それなら1週間程度で森は抜けられるかもしれないな。森を抜けたら、以前拠点にしていた町があるから、とりあえずはそこを目指そう。ということで、今夜はもう遅いからひとまず解散だ。明日から準備に取りかかろう」

そうだ、ということでは、こういう使い方が正しい。

もしかして、聖女の魔法の通訳がおかしいのだろうか。それなら、深く考えてもしょうがない、そういうものだと諦めよう。

「りょーかい!町か!いいね!楽しみだね!ウェーイ!」

聖女が妙に低い声を出し、持ってたグラスを高々と掲げた。

説明はしづらいが何かがおかしいと感じる。聖女の違和感が本当に通訳の問題なのか、果てしなく怪しい。