そいつは、驚くほど白い髪をしていた。

 それはまるでボタンユキみたいな白だった。

 ここなには幼馴染がいた。父親の友達の子供でときどき一緒に遊ぶ子がいた。男の子と思っていた。トイレとかお風呂とか着替えとかも男の側だった。一緒にトイレへ行ったり、着替えたり、お風呂に入った記憶もない。風祭飛鳥(かざまつりあすか)と言った。
 野いちご学園高等部に入学して、初日、同じクラスで会ったのだ。
 それは、ポニーテールをした女子だった。銀髪だった。目が赤かった。スクールバッグを肩に手をやって背中にかけるという男の子の持ち方をしていた。胸が大きかった。
 「久しぶり、ここな」
 と、その女子は言った。
 「え」
 「え、忘れちゃった」
 「だ、誰?」
 「俺、俺」
 「え」
 「俺だよ、風祭飛鳥(かざまつりあすか)
 「え」
 風祭飛鳥?そういや、小さいころそういう名の男の子と遊んでたな。
 「えええええええええ、飛鳥、女の子になちゃったのお」
 「そうなんだよ、魔法使いに呪いかけられてさあ」
 「うそおおおおおおおおお」
 と、ここな。いやいやいやそれは嘘だ。飛鳥は最初から女だったんだ。でもトイレとか、お風呂とか、着替えが、男の側だったのは?男として育てられてた?
 「トイレとか、お風呂とか、更衣室とか女の子側じゃなくちゃだめでさあ」
 ええええええええ。要するに、年頃になって、トイレやお風呂、着替えは女の側になったんだ。