野いちご学園高等部普通科教室棟3階・廊下。
 1年C組の札。
 ここなが、歩いていた。教室のドアを書けた。がらがら。

 1年C組教室。
 前に教壇、黒板。机が並んでいる。
 生徒たちがいる。
 シンと、その仲間が入って来た。
 「しかし、悪魔が高瀬(たかせ)と握手とはなあ」
 と、シンの仲間の圭吾。茶髪のセミロングだ。
 「ええええええええ」
 と、クラスの女子たち。
 「え、それ本当?」
 と、女子が圭吾に聞いた。
 「ああ。高瀬のやつ、悪魔と握手してた」
 と、圭吾。
 「ほんとよお」
 と、教室へ入って来た女子がいった。
 「ほんと。高瀬君が悪魔と握手したがるなんて」
 「しんじられなあい」
 と、女子たちが噂した。
 「よおし」
 と、圭吾が前へ行った。圭吾は黒板の前でチョークを取ると、黒板に相合傘を描いた。そうして、黒田チセと、高瀬帳と書いた。
 「もお、幼稚なことやめなさいよお」
 と、女子。
 「別にいいじゃん」
 と、圭吾。
 「別にいいんじゃない?」
 と、女子。
 生徒たちが教室に入ってくる。
 「え、なんだよこれ」
 と、男子。
 「ああ、さっき見た。高瀬君が悪魔と握手してた」
 と、女子。
 「ほんと、何あれえ」
 と、女子。
 「悪魔がやってくるぞー」
 と、シンの友達が来た。後方にいた。
 みんなが後方を見た。みんなかたずをのんだ。
 高瀬君が来た。
 「おはよう」
 と、高瀬君。みんなが高瀬君を凝視した。
 「ん?」
 高瀬君は、黒板を見た。
 「ああああああああああああ」
 しーんとなった。
 「黒田さんと、僕の相合傘あ」
 と、高瀬君。
 チセが入って来た。
 「悪魔が来たぞー」
 と、男子。
 「悪魔」
 「悪魔」
 「あ、悪魔だ」
 と、クラスのみんなが口々にいった。
 「何あれ」
 と、チセがか細い声でいった。
 ここなは、チセを見た。ここなは、手をぎゅっとした。
 そうして、スマホを持って、黒板の前にたった。
 「はあい、皆さん、注目う」
 と、ここなが大きな声でいった。しーんとなった。みんながここなに注目した。
 「今朝、話題のお二人さんが来たところで、悪魔こと黒田さんと、高瀬君の握手の動画を見てみたいと思いまあす」
 と、ここながかわいく元気にいった。
 みんなが騒いだ。みんながここなの前につめよった。
 「えええええええええ、ここなん、悪魔と高瀬の握手現場撮ったんだあ」
 と、男子。
 「え、そうなんだあ」
 と、高瀬君も前へ行った。チセも前へ行った。
 ここなはスマホをいじると、前へ出した。
 スマホには高瀬君とチセが写っていた。
 「ねえ、黒田さん、もしよかったら、僕と握手してくれない?」
 と、高瀬君。
 「え」
 と、チセ。
 「ねえ、僕と握手してくれないかなあ?」
 「だめなのお」
 と、高瀬君。
 「ああ、いいよ」とチセ。
 「やったあ」と、高瀬君。高瀬君は右手を出した。チセも右手を差し出した。高瀬君とチセが握手した。
 「うおおおおおおおおおおお」
 クラス中が歓声をあげた。
 「よおしこれであれができるぞ」という高瀬君の声が流れた。
 「うわあ、なんで高瀬君と悪魔が!」
 「まじかよ」
 「うそお!」
 みんながざわついた。
 「やったあ、僕と黒田さんの熱い友情、撮ってくれたんだあ」
 と、高瀬君。
 「あ、熱い友情って」
 と、チセ。
 「ところで、ようしあれができるぞってのは」
 と、シン。
 「でも高瀬が悪魔とはなあ」
 「びっくりしたわよ」
 「どういうこと」
 「なんでえ」
 「ところで、ようしあれができるぞってのは」
 と、シン。
 「ああ、それは・・・・・・」
 と、高瀬君。
 「はあい、皆さん注目(ちゅうもおく)」
 と、ここなが大きい声でいった。
 しーんとなった。
 「ところで、ようしあれができるぞってのは」
 と、シン。
 「うん、それはあ・・・・・・」
 「はあい、高瀬君(たかせくーん)黙ってみようか」
 と、ここな。
 二人も黙った。しばし沈黙が流れた。