この恋の化学反応式

夢も目標も何も無かった私はきっと一生、他人に流されて、無難な道を選んで生きていくのだと思っていた。

でも先生が私を変えてくれた。
私に足りない物を補ってくれるように、傍にいて励ましてくれた。

先生との授業の中で勉強した、化学反応。

ある物質がそれ自身で、あるいは他の物質との相互作用によって、他の物質に変わること。

私にとって先生との時間は、化学反応のようなものだと思う。
先生と会って、関わって、2人の時間を過ごして、私はきっと、前よりずっと良い自分になれた。

「私、橘先生に会えて良かったです」

「なんだよ急に」

他愛ない話をしながら家路につく。

この先色々なことがあるかもしれないけれど先生と一緒ならきっと大丈夫。

「がんばれ」じゃなくて、「一緒にがんばろう」
と言ってくれる先生となら。

2人の間を爽やかな風が吹き抜けた。
いつもなら鬱陶しく思う虫の鳴き声も今は私たちを祝福する演奏のようだった。

「来年も、また一緒に花火見ましょうね」

「ああ、約束な」

繋いだ手を見て想う。

この恋の化学反応式を、これから先もずっと先生と解いていきたい。