息をしているのか、脈はあるのか確認するが、彼女は死んでいた。

「どうして……」

 呟いても冷たい地下の空間にただ消えていくのみ──


 まずはこの場から脱出をしなければならないと思い、出口を探していると、ふとどこからか足音が聞こえた。

「──っ!」

 警戒しながら足音のした方へと目をやると、薄暗い通路から若い男性が姿を現した。

「おや、私の推察よりずいぶん早いお目覚めだね。早めに様子を見に来てよかったよ」

 リーベルトは腰に手を当てる。
 ……が、いつも腰に携えている剣がなく、その手はからぶってしまった。

「剣ならここにあるよ、ほら」
「──っ!」

 王族の紋章付きのリーベルトの剣を男は投げて渡す。
 頭上で受け取ると、すぐさまリーベルトは男を警戒して剣を抜いた。

「僕は怪しいものじゃないよ」
「そういう人間を信用できるか。お前は……王宮で見たことがない顔。何者だ」

 男はそういうと、シルバーの長い髪を梳いて靡かせて名乗った。

「ラミュレット」

 そう名乗った彼の赤い瞳をリーベルトはじっと見つめる。

「睨まないでよ~・僕は君達を救ったんだよ」