利瀬くんの甘さに溺れたら


…なのに、そういうところも好きだと思っちゃう私はおかしいのかな…?



恥ずかしさで俯き気味になっていたけど、利瀬くんの顔が見たかったから顔を上げた。



「私はいいけど───…っ!?」



瞬間、バチッと目が合った。



…利瀬くんじゃない。



「あ、杏奈ちゃん…」



私と利瀬くんの手元を凝視して、酷く悲しんだ顔を見せる女の子……杏奈ちゃんが、そこにいた。



そして、私を見てすぐに隣の利瀬くんへと視線を移す。



今にも泣きそうな杏奈ちゃんが、利瀬くんの腕を掴んだ。



「…っ利瀬くん!あの、私っ…利瀬くんが好きなの…っ!利瀬くんが他の子のものになるなんて、耐えられないっ…」



悲痛な叫び声が廊下に響く。



周りにいた生徒やお客さんたちが、私たちをこれでもかというほどに見てくる。



ついさっきまで繋がれていた手は、既に離れていて。



涙をぽろぽろと零す杏奈ちゃんが、その場に泣き崩れた。



「ぅっ…ひっく…っ…」



……何が、怒ってるんだろう。



「…桜井さん。おねがい、泣き止んで」



「っ…だ、って…っ…」



「ここだと目だっちゃうから、一旦ここを離れよう」



「っ、うん…」