利瀬くんの甘さに溺れたら


…なんで利瀬くんはそんな不思議そうな顔をしているんだろう。



杏奈ちゃんの行方を聞きたいのに、利瀬くんは首を傾げている。



「さっきまで来てたでしょ?」



「さっきまで……あ、桜井さんのこと?」



「そうそう…って、え…?」



やっぱりわかってるじゃん!って言おうとしたけど、言葉を失ってしまった。



もしかしてだけど、利瀬くんって…。



「杏奈ちゃんの下の名前知らなかったの…?」



「うん、今知ったよ」



う、うそ……そんな男子いる?



当然のように答える利瀬くんに、絶句した。



だって、あんな美少女のフルネームを知らないクラスメイトなんているかいないかだよ?



なんなら、学年を超えて噂になっているというのに…。



「…で、その桜井さんがどうかしたの?」



衝撃の事実に驚いていると、特に気にしていない利瀬くんが話を戻して聞いてきたため私も「えっとね」と返す。



「衣装の変更があるって言ってたから、まだここにいるのかと思ってただけ。でも、利瀬くんが聞いてたならそれで…」



「衣装の変更…って、何の話?」



「……へ?」