それもそのはず。
常連客である中川さんが、同じ食品会社グループの社長や副社長を引き連れてやって来てくれたのだ。

それ以降リピーターが増え、私を指名してくれる。そうやって私の固定客が増えていくのは、本当に嬉しいしやりがいがあった。


「はぁ。No.1にはまだまだ遠いわ」

「ふふっ、お疲れ様でした」

「はーい、お疲れ」


めぐみさんにひらひらとてを振りながら、私は高森先輩と約束していた場所へ向かうために足早にお店をあとにした。

お店から少し離れたところで、高森先輩の姿が目に留まる。
私が仕事を終えるまでいつも近くのカフェで時間を潰していると言っていた彼。

今日も黒のビジネスバッグからはみ出るくらいの資料を持って、私のことを待っていてくれたみたいだ。私の姿を捉えると、こちらへと向かって来てくれる。


「西野。お疲れ」

「……お待たせしました」


重そうなビジネスバッグを横目で見ながら、高森先輩と並んで行きつけとなったバーへと足を運ぶ。
真夜中の0時ともなれば開いているお店もポツポツしかなくて、人通りも少なくなっているため、誰かに目撃されるなんてことはあまりないから安心。

しばらく歩くと『スィートホーム』と書かれたお店が現れ、1歩先を歩いていた高森先輩が木造のドアを押し開けて店内に入った。