オズワルト伯爵から伯爵達にパーティーを開く旨の招待状が、一斉に伯爵達の家に届けられる。
 クォーク領を管轄するクォーク家にも、例外なくその手紙は届いた。
「この日を、どれだけ待ったか……」
 にちゃりと歪んだ笑みを浮かべるスルグに、ユノアは口角を上げた。
「この日、間違いなく魔導公爵は婚約者をお披露目なさる筈ですわ」
「ああ……私達の可愛いスフィアを差し置いてその座に着いたあの忌々しい小娘をな……っ」
 笑みを浮かべていた表情が、一瞬で憎しみに変わる。そんな二人に、少女は微笑んだ。
「お父さま、お母さま……大丈夫よ。私は大丈夫」
「ああ、スフィア……なんて可哀そうな子なんでしょう……」
 ユノアは涙を拭いながら、スフィアを抱き締める。
 スフィアは目の下の隈を隠そうともせず、微笑みかける。
「セシリアスタさまは、きっと『不良品』が魔道具を使ってたぶらかされたんです」
 そう言いながら、テーブルの上の小さな香炉を撫でる。
「魔道具を使ってまで人の婚約者をたぶらかして……『不良品』の癖に生意気なのよ」
「そうだな。あの『不良品』に振り回されるのはもう懲り懲りだ」
 スルグの言葉に、スフィアは微笑む。
「でも、これがあればセシリアスタさまも目を覚ましてくださるわ」
 深い笑みを浮かべながら、スフィアは囁く。これで、セシリアスタは私のものだ、と。
「待っていてね、セシリアスタさま。この魔道具で、すぐに目を覚まさせてあげるから」
 そう言い、スフィアは笑った。