結局、先生との初お泊り旅行は、私の生理痛で散々な連休だった。
元々生理痛も重い方で、特に三日目までは薬を飲んでても痛みと貧血が酷く、完全に彼氏を放置して寝るだけという……世にも恐ろしいお泊り旅行となってしまった。

『俺のことより、自分を大事にしろ』と、終始気遣ってくれる先生に申し訳なさが募ってしまって、先生との関係性の進展に凄く期待していたんだと改めて思い知った。

本当はそんな期待なんてするのはおこがましいのに。
逢えるだけで十分すぎるほど幸せなのに。

一つを手に入れたら、次から次へと新しい目標みたいなものがどんどんできてしまって。
気付くと欲深い女に成り下がっている気がする。

「なんかね……、自分が卑しい女になってる気がして凄く嫌なの」
「卑しい女?」
「うん。……連絡先を知ることができただけで幸せだと思えた三か月前に比べて、どんどん欲深くなって。もっともっとって、独占欲みたいなものなのかな。優越感なのか分からないけど、先生のこともっと知りたいし、底なしで好きになってる気がする」
「そんなの当たり前じゃない」
「え?」
「好きになるって、そういうことだよ。……もしかして茜って、今までそんな風な思いになったことないの?」
「……うん」
「でも、彼氏いたよね?」
「……うん」
「先生ほど、好きじゃなかったってこと?」
「……たぶん『彼氏』っていう存在が欲しかっただけなのかも」
「あぁ~」

全く彼氏がいなかったわけじゃない。
当時は好きだと思っていたけど、今思うと『先生への片想い』≧『当時の彼氏』だった気がする。