「はぁ、もう無理!」


高校1年の夏休みのある日の朝。

まだ8時を過ぎたばかりだが、あまりの暑さに扇風機だけでは耐えられず、私は部屋の冷房をオンにする。

しばらくして、ようやく部屋が冷えてきたと思っていたら。


(もえ)(わたる)くんが来てくれたわよ」

「よっ!」


私のお母さんに連れられ、幼なじみの航がニコニコ顔で部屋へとやって来た。


「何か用?航」


私は航を軽く睨む。


「なぁ、萌。俺と一緒にアイス食べに行こう」

「ええ、また!?この暑いのに、なんで外に出なきゃならないの」

「いいから、行くぞ」


幼なじみの航は夏休みになってからというもの、二日に一度のペースで私の家へとやって来る。

そしてなぜかいつも決まって「アイス食べに行こう」と言い、私を外へと連れ出すのだ。



家から外に出ると、モワッとした熱気に包まれる。

まだ午前中だというのに、太陽がギラギラと照りつけてかなり暑い。


「ねぇ、なんでいつも私を誘うの?航一人で行けばいいじゃない」

「ダーメ。萌は、俺と一緒に行くって決まってんの」

「何それ。意味分かんないんだけど」


口ではそう言いつつも、本当は嬉しい私。

アイスクリームは私の好物だし。

それにどんな理由であれ、幼い頃から密かに片想い中の航に、こうして会えることが嬉しいんだ。


航とはお互い別々の高校に通ってるから、尚更。こんなこと、航には絶対言えないけど。