ガラッ!!


「おっはよー!」


教室のドアを勢いよく開けて、クラスメイトに挨拶した。



早見(はやみ)あすか、17歳。


元気が取り柄の高校2年生ですっ!



「あすか、おはよー」


「早見、はよ。今日もうるせー」


「うるせーは余計!!」


同クラの男子の絡みを、あははっと笑い飛ばして(かわ)すと、自分の席に向かう。



そして…


「田島くん、おはよー!今日も好きっ!」



隣の席の、田島俊之(たじまとしゆき)くん。


肘をついて窓の外を見てたけど、私の方をチラッとみて一言。


「…そりゃどーも。」



うーーん、今日も通常運転!!


いいの、気にしないっ


だって、やっと最近、私の方を見て反応してくれるようになったんだから!


進歩、進歩。



私が満足して、ニコニコしながら椅子に座り、リュックの中から教科書を出していると…


「…なぁ。」


「え!?は、はいっ!」


え、田島くんがこっち見てる!!


いつもチラッとしか見せてくれない顔をこっちに向けて…!!


パーツの整った顔。


友達の中には、田島くんのこと、イケメンじゃないって言う子もいるけど、私はやっぱりイケメンだと思う!



…じゃなくって!!


大変!事件です!!


田島くんが私を見つめてます!!


なに!?なんで!?


てか、あっつ!!顔、あっっつ!! ←熱い、の意。



パニック状態の私を、表情ひとつ変えず見つめる田島くんが、口を開いた。



「…なんでさ、毎朝毎朝、好きとか言ってくるの?」


「え?好きだからだけど?」


「なに、コクハクのつもりなわけ?」


「うん、そうだけど?」



え、今更それ聞く!?


私がキョトンとしていると、田島くんが溜息をついた。



「そういうのってさ、相手のこと知ってからするもんじゃないの?」


「え!?知ってるよ、田島くんのこと。」


「例えば?」


「例えば!?」



私がびっくりしている様子を、じっと見つめる田島くん。


答えないわけにはいかない。



「えっと、テストの点数、いつもいい、とか。」


「…歴史、古文あたりはいつもボロボロだけどな。」


「知ってる!でも数学と物理は、いつも満点近く取ってるもん!すごいよ!」


「なんで知ってるんだよ。覗いてんの?俺の答案用紙。」


「え!なんで覗いてるって分かったの?」


「…早見さん、今、自爆したの気付いてる?」


「あ!あと、テニス上手いとことか好き!テニスしてる田島くん、かっこいいもん!運動神経いいよね!」


「話聞けよ。…運動神経って言っても、走るのは遅いけど?」


「知ってる!」


「なんで知ってるんだよ…」


「でも、テニスでボール追いかける時は早いよ?50メートル走で本気出してないだけなんじゃないかなって思ってる!あ、それからね!」


「まだあんの?」


「うん!顔がタイプ!!」


「…顔?」


「そ!特に唇!」


「…唇?」


「他の人より、ちょーーっと厚みある感じが色気あるの!絶対、キスしたら気持ちいいだろーなーって………はっ!!」


待って待って!!


私今、なんて言った!?


ゆっくり田島くんの方に視線を向けると、いつもかったるそうな目をしてる田島くんが、目を見開いて私を見ていた。



「……」



「……」



「…私、今、また自爆しました?」



「…したな、自爆。」



はっず!!私の妄想が知られてしまったぁぁぁぁ!!


どーすんのよぉぉ!!


手で顔は隠したけど、あっつくなった耳はむき出し状態ぃぃ!




「……試す?」



「………へ!?」


ボソッと聞こえた田島くんの声が信じられず、顔を覆っていた(てのひら)を離して、田島くんを見た。


肘をついて、顔に手を添えてる様子がなんとも…!


俯いている状態から目線だけ私に向けてる表情は、色っぽいけど、少し恥しそう。



ガラガラッ


「きりーつ!」


担任の先生がドアを開けると、日直から号令がかかった。


慌てて立ち上がり、礼をして着席する。


 
「みんな、おはよー。さっそく、ホームルーム始めるぞー。赤井ー!」


「はーい」


あーあ、日常ーー。


いい感じだったのにーー。



チラッと田島くんを見ると、田島くんもチラッとこっちを見た。


…ダメ元で言ってみよ。


クラスでは出欠がとられてる最中だけど、我慢できず、口に手を添えてヒソヒソ声で田島くんに話しかけてみる。


『さっきの、お試しってやつ』


『…お願いしたいです。』



ドキドキしながら、反応を待った。



すると、田島くんが、フッと微笑んで、こう言ったの。




『……あとでな。』




ズキュン。




心臓、撃ち抜かれました。




今日も元気に告白したら、思いが届いてしまったようです。