でも足が速い優衣ちゃんだから、見失ってしまって。 線香花火を握りしめて探し回っていると、 大学のシンボルでもある、樹齢何百年かの大木の下にあるベンチに座っているのを、ようやく見つけた。 「線香花火、好き?」 「…何で私?向こうでみんなとやってきなよ」 「俺からの花火デートの誘いを断るの!?もったいないな…」 「自分で言うんだ…モテる男は違うね」 毎回何故か、俺とだけは会話してくれる優衣ちゃんに冗談を交えながら、 なるべく自然に隣に腰掛ける。