「澤田さんっ、今日クラスでカラオケ行くんだけど澤田さんも来ない?」

「行こー?」


SHRが終わってみんな帰り出したところで、そう声をかけられる。


「ごめん私、カラオケには子供だけじゃ言っちゃいけないって言われてて……」


せっかく誘ってくれたのに申し訳ないな、と思いながら断ると、女の子たちは分かっていたかのように笑顔で手を振った。


「そっかー、ならしょうがないね。また明日!」

「うん、また明日」


私も笑顔で手を振り返すと、クラスの人気者で学級委員も務めている前田さんが大勢の生徒を引き連れて教室を出ていく。


……やっぱり前田さんは人気者だなぁ……。


前田さんは小さい頃から子役をしていて、今ではみんなが知っているようなドラマや映画にも出演している。

それに加え、この学校で一番人気のある三年の先輩と付き合っているから、前田さんは女子の憧れの的。

そんなことを思いながら、私も帰ろうとカバンを持って立ち上がると、少し離れたところから前田さんたちの大きな声が聞こえてくる。

「カラオケ行けないとか人生損してるよね〜。てか、子供ってw」

「もう私ら十七なのにね。お嬢様気取りじゃない?」

「近づくなっ、外民ども!とか?」

「うわぁ〜、澤田さんってそんなキャラだったの?」


私が実際にそう言ったわけじゃないのに、どんどん根も葉もない噂が広がっていく。


……別にカラオケに行けなくても人生は損しないもん……。


誰にも聞かれることのない独り言を心の中で呟いて、カバンをかついで前田さんたちが歩いて行った方の反対側から校舎を出た。