けれど、その見目麗しい外見は令嬢たちの心をつかみ、クールなところがいいと人気だ。顔がいいと欠点まで美点に変わるらしい。とはいえ、人を近寄せないオーラは健在のため、貴族令嬢からは鑑賞用として遠巻きに見られている。
 一年前まではレティシアもそのうちの一人だった。
 国境を守る辺境伯の跡取りとして、三大公爵家から婿養子を取ることになったとき、エリオルが選ばれた。レティシアと年齢が近く、婚約者もいなかったことから、グラージュ公爵も二つ返事で了承したと聞いている。

(婚約者としてエスコートもしてくださいますが、いつも会話が続かなくて無言が続くのですよね。このままでは結婚生活にも支障がありそうですし、せめて心の声でもわかればいいのですけれど……あ。そういえば、昔読んだ絵本に流れ星は願い事を叶えてくれるって書いてあったような……?)

 レティシアは無言を貫く婚約者を一瞥し、流星群に視線を戻す。
 そっと両手を組み、目を伏せた。

(少しの間でいいのです。わたくしにエリオル様の心の声を聞かせてください……って、これで願いが叶えば苦労しませんよね……)