婚約者の心の声を知りたいと流れ星に願ったら叶ってしまった

(とはいえ、顔を見るたびに逃げ出すなんて、婚約者としても人としても失礼ですよね……。心の広いエリオル様はわたくしの非礼な態度を咎めることはありませんが、いつまでも逃げ回っているわけにもいきませんし……どうしましょう)

 エリオルのことを考えるだけで、心がそわそわして落ち着かない。
 露骨に避けている婚約者をどう思っているだろうか。不信感が積み重なっている頃合いかもしれない。だが普通にしようと思えば思うほど、ぎくしゃくとしてしまう。

(うう……婚約者の適切な距離感がわからなくなってしまいました。辺境伯の娘として何事にも動じないように心を鍛えたつもりでしたけど、不甲斐ない限りです……)

 試験前は利用者が増えるが、それ以外の図書室は閑散としている。
 時折ページが繰られる音が聞こえてくるぐらいで、足音も毛足の長い絨毯に吸い込まれていく。この神聖な空間に、読書を邪魔する者などいない。
 レティシアはため息を飲み込んで、他の利用者の迷惑にならないよう、物音を立てないよう慎重に本棚から目当ての本を抜き出す。読み途中だった革張りの装丁が美しい本を両手で抱え、奥のキャレルに向かった。