あとはこれを提出すれば、私達はパートナーという関係になる……。
 と思うとなんだか、昨日から今まであっという間に感じた。


 でもこれで、退学は免れる。
 お父さんお母さん、心配かけそうになったけど娘はちゃんと乗り越えれたよ……!

 感慨深いものがあり、天を仰いでいれば左手を握られる。八雲くんだ。


「さ、行こう? 風花ちゃん」


 今度は右手をするりと握られる。
 こっちは真白くんだ。


「俺も一緒に行こう。郁人だけじゃ、道中で俺の名前を消すかもしれないからな」

「……バレた?」

「お前……。冗談で言ったつもりだが、やるつもりだったのか!」

「さぁ?」

「お前という奴は……!」


 二人の言い合いなんて、耳に入らない。
 なぜなら、両手をとんでもないイケメンに握られているからだ。
 私の体はぷるぷると震えている。
 そんな私に気づいたのか、二人が顔を覗きこんできた。


「風花ちゃん?」

「おい、どうかしたのか?」


 バンッと両手を上げ、二人の手を振りほどく。そして八雲くんから、申請書をひったくり──走ってその場から逃げた。


「(提出くらい、一人でも出来る! だから、私の隣に立たないでー!)」


 旧校舎の入り口まで来て、はぁはぁと肩で息をする。
 二人はまだ追いついてないはず、と後ろを向けば……ニコニコ笑顔の八雲くんと、澄ました顔の真白くんが立っていた。


「ひぃ!」

「どうしたの風花ちゃん。おいかけっこ? ふふっ。僕、追われるより追う方が燃えるタチなんだ」

「奇遇だな、俺もだ」

「くっ……追ってこないでくださいっ!」


 学園長室がある本校舎まで、全力疾走する私。

 その後ろを学園で一、二を争うイケメンが追いかけるという奇妙な光景を、時間的にも活動し始めた多数の生徒が目撃していく。


「(お願いだから、私を見ないでー!)」