「だったら、なおのことやめてくれ。俺はそんなの嫌だ」 「……慧くん」 「俺は人間として、新奈と一緒に生きていきたい」 私は目を見開いた。 そして、どうしようもない後悔に襲われた。 ああ、そうだったのか……。 慧くんは戦っているんだ。 「ごめんなさい……」 私はぎゅうと慧くんを抱き締め返した。 慧くんは私を離すと、やさしく笑ってくれた。 「俺の方こそ、黙っていてごめん」 そうして、夕闇がせまる空を見上げながら続けた。 昨日より丸みを増した月が光を増していた。