「どう、したの? 慧くん」 問いかけながら、はっとなる。 噛み締めている慧くんの唇からは血がにじんでいた。 「なんでもない、大丈夫だ」 全然そうは思えない絞り出したような声で言うと、慧くんは夜空を見上げた。 いつの間にか、三日月が浮かんでいた。 ちっ、と舌打ちするものの、慧くんは力ない様子で私を気遣った。 「……ごめんな。怖かっただろ、急に。悪かった」 ふるふる、と私は首を横に振る。 怖かったのは事実。 だけれども、ドキドキするばかりで、嫌だったというわけでもないのも、事実……。