「その子を見かけた瞬間、異常な興奮を覚えたんだろ。いいか? もしまたそんなことが起きても、ちゃんと理性でセーブするんだぞ」
「わかった! 誓います!」
「自分は他の人間とはちがうところがある、ってことをちゃんと自覚しておけ。じゃなきゃ、自分の身が破滅するんだからな」
と言い渡すと、慧くんは手を離した。
今度こそ尻もちをつくと、男は慧くんに怯えるような顔を向けて、そそくさと逃げて行ってしまった。
周囲から沸き起こる拍手を気に留めず、慧くんは私に駆け寄った。
「大丈夫だったか? ケガは?」
「ううん、してないよ。ありがとう、慧くんが来てくれて、本当に助かったよ。でも、どうしてここがわかったの?」
「メッセージ。送っても、返事なかったろ」
と言うと、慧くんは少しむっとした様子でスマホを掲げて見せた。
そうだった……!
家についたら「無事に帰宅した」ってサインとしてメッセージを交わすことが約束だった。
今日は美菜ちゃんとの買い物につい夢中で、いつも帰宅時間をオーバーしてしまったし、スマホを見るのも忘れていたし……。



