「ったく、この俺の彼女に気安く近づくなよ」
「って……! 離せよ、このガキっ」
興奮した男が慧くんに殴りかかっていった。
慧くんは、一歩も後退ることもなく、ぱしっとその拳を片手でつかんだ。
両手を拘束された男は、なおも蹴りを繰り出してくるが、
「ぎゃ」
それよりも速く動いた慧くんの長い脚が、いともあっさりとその脚をはらい、男は地面に尻もちを――つきそうになったが、慧くんに両手を持たれていたので、まるで子供が大人に遊んでもらっているみたいに、ぶらんと高く持ち上げられた状態になる。
「くっそ、離せよ!」
脚をばたつかせる男をなおも高く持ち上げる慧くん。
けして軽そうな体形はしていない男を持ち上げているのに、その顔には、まるでおもちゃでも持っているみたいに涼しげな笑顔を浮かべている。



