「なんだよ、かわいげがねえな。人がせっかく親切にしてやろうってのによぉ」
つかんできた手を振り払おうとするかたくなな私に、男は苛立ちを見せ始めた。
周りの人たちも、私たちの様子に視線を向け始める。
私一人の力で混血ヴァンパイアの男の人を振り切るのは無理だった。
でも誰かに助けてもらえば、その人が被害に遭いかねない。
混血ヴァンパイアは、気持ちが昂ると攻撃的になり、力も強くなる。
どうすればいいんだろう……。
焦り始めた、その時だった。
「さっさとその汚い手を離してくれる?」
まるで子供の手を引き剥がすように、私の手からあっさりと男の手をつかみ取った人がいた。
淡い茶色の髪をした、背の高い男の子。
慧くんだった……!



