「今日は学校どうだった?」




綾子おばさんはいつもこれを聞く。

私はアイスティーに入ったレモンを、ストローで突いて遊んでみる。



『別に、普通だったよ。』



「普通〜?あさ美ちゃん、放課後友達とかここに連れておいでよ?」 



私の“普通”に笑いながらおばさんは言う。


拭いているガラスコップがきゅっきゅっと音を出している。


『私、友達いないから…』

私が苦笑いをしてごまかすと、おばさんは眉毛をあげて困った顔をした。




本当に、放課後にわいわい騒いで遊べる友達なんて

私にはいないんだ。




「両親のこと………原因だったりする?あさ美ちゃん、学校でイジメられたりしてない?」




私の言葉を本気で心配したおばさんは真剣な顔で問う。



私は少し微笑んで、

『私に友達がいないのは昔からだよ。』

と、答えた。





そう、ずっとそう。

友達と“青春”と呼べるような時間を過ごしたことなんてない。