『あのね、おばさん』


私は心に決めかけていることをおばさんに伝える。




『私…お父さんに会いに行こうと思う。』






おばさんは手に持っていたグラスを置き、驚いた様子でこっちを見た。



『お父さんのこと、許したわけじゃない。お母さんを殺されたんだもん…。一生許せないと思う。
だけど………私のお父さんには変わりないんだよね。』


「あさ美ちゃん………」






迷路の中を散々あがきまわって、たどり着いた決意がこれだった。






『私、お父さんに会いに行く。でも、これが最初で最後。』






私はカウンター越しに見える、食器棚の中の綺麗な器を見ていた。




それは店の電気に反射してキラキラと光を放っていた。