推しへの恋愛禁止令を出したのは推しの相方でした

1ヶ月後に届いたのは合格通知だった。
僕の瞳から涙が溢れた。
オーディションに受かったコトが嬉しかった。
僕を認めてくれたと思えて嬉しかった。
届いたメールをそっと閉じ、僕はリビングへ行く。
両親に伝えるかどうかを悩んでいた。
僕はオーディションを受けているコト自体話していない。
両親にどんな反応をされるか怖かった。
そんな不安な気持ちのままリビングへ入ると、父が立っていた。
「おかえり、早かったんだね」
「あぁ。これ届いてたぞ」
そう言って差し出されたのは大きな封筒だった。
差出人を見ると「スターレイン事務所」と書かれていた。
封筒を開けて中身を見ると、事務所に入る為の必要書類などが入っていた。
僕は封筒を胸に抱え、父を見る。
そして母も僕たちの方へ近づく。
言うなら、今しかないと思った。
「父さん、母さん、聞いてほしい」
真剣な僕の声に2人は不思議そうな顔をして振り向く。
僕は高鳴る鼓動を感じながら、口を開く。
「僕、アイドルのオーディションに受かったんだ。アイドルになろうと思う」
もっと言うべきコトはあるのだろうと思った。
それでも緊張していた僕は端的にしか伝えられなかった。
父と母は突然のアイドルという言葉に驚いているようだった。
先に口を開いたのは母だった。
「アイドルって......。いつも外に行って何をしてるのかと思ってたけど、アイドルを目指してたの......?」
「そうなんだ。外で歌ったりとか......してた......。それでこの前受けたオーディションに合格したんだ。これから頑張っていきたいと思ってる」
母が父の顔を見る。
僕も父の顔を見る。
父は難しい顔をしながら、口を開く。
「......本気で言ってるのか?」
「うん。本気だよ。僕はアイドルになる」
父は僕に背を向ける。
そして短く、こう言い放った。
「もうお前も大人だ。好きにしろ」
背を向けたまま、僕の方を見ない父。
その行動の通り、父はもう僕を見ないのだと思った。
父が望んでいた息子は決してアイドルになるような息子ではない。
芸能界という華やかな世界にいくコトを望んでいない。
そんな望んでいない道に進もうとする僕を見ようとは思わないだろう。
母も困った顔をしたまま何も言わなかった。
僕は両親が望む存在にはなれなかった。
そんな僕は両親にとっていらない存在だろう。
そんな僕に期待するコトはないだろう。
両親は僕という存在を諦める。
そして僕も、両親を諦めた。
「準備出来たらこの家も出ていくから。今まで、ごめんね」
僕はリビングから出ていき、部屋に戻る。
心に淋しい風が吹く。
僕は届いた合格メールと封筒を見る。
アイドルになれるという実感が心の淋しさを少し埋める。
「......頑張らなきゃ」
そして僕は送られてきた書類の記入を始めた。