「忘れちゃった」
そう言いながら僕は高台へ戻る。
上着を置き忘れたまま帰った僕は高台まで取りに戻った。
柵に掛けていた上着を見つけ、手に取り、家へ帰ろうとした時だった。
僕はさっきの男の子がまだベンチに座っているコトに気づいた。
僕はチラッと見た後、彼に近づき、声を掛ける。
「あの、大丈夫ですか?」
体調が悪く、座り続けているのではないだろうか。
そう思い、僕は彼に声を掛ける。
彼は驚いたように顔を上げ、僕を見る。
「あ......いや、大丈夫。なんでもない」
小さな声でそう答える。
顔色自体は悪くなく、体調が悪いという訳ではなさそうだった。
「大丈夫なら良いんだけど......」
なぜ彼がここに居続けるのかは分からなかった。
それでもこれ以上言葉を続けられない僕は、離れた方が良いと思った時だった。
「さっき、歌ってた人だよな......そこで......」
その言葉に僕は満面の笑みが溢れる。
「うん!聴いてくれてたの!?」
「あぁ......なんか、聴いてて心地よかったから」
そう言われ、僕は更に笑顔になる。
「そう言ってくれて嬉しい!ありがとう」
そう答えながら、僕は彼の瞳を見る。
その瞳は1週間前に会った女の子の瞳を思い出させた。
今目の前にいる彼の瞳は、あの女の子のように悲しみで揺れていた。
彼はボーッと空を見上げる。
僕も彼と同じように空を見上げる。
茜色に染まる空を綺麗だと僕は思った。
彼はどんな気持ちで空を見上げているのだろうか。
「あの空に行くにはどうしたら良いんだろうな」
彼は突如そう呟いた。
その言葉は僕への問いかけではないように思えた。
きっと心で思っていたコトが無意識に声となって僕に聞こえたのだろう。
それでも僕は彼の言葉に答えた。
「......パイロットになるとか?」
僕がそう言うと、彼はふっと笑った。
「そうだな、うん、確かに。でも俺は飛ぶだけじゃなくて、会いたいんだ......」
誰に?とは聞けなかった。
彼の瞳が涙で濡れているのが見えたから。
僕はまた空を見上げる。
「......会いたいと思うけど、どうしても会えない時ってあるよね。僕はそんな時、声を届けたいって思うんだ」
「声?」
「うん。僕はここに居る。ここで生きてる。だから君も頑張れって思いながら歌ってる。そしていつかテレビとか見て欲しい人に、見て貰える所で歌えたら良いなって思ってるんだ」
僕の言葉に彼は驚いた顔をした後、柔らかい表情になる。
「......カッコいいな......あんた......」
僕は彼を真っ直ぐ見つめる。
「精一杯歌えば、空にも声は届くって信じてる。その声はきっと届いて欲しい人に届くよ」
何の根拠もない言葉だ。
それでも僕は届くと信じている。
そう信じていると、目の前の彼に伝えたかった。
「そっか......うん......俺も届くと良いなって思うよ......」
彼はまた空を見上げる。
さっきよりも優しさで溢れた瞳を僕は綺麗だと思った。
「君も一緒に歌う?」
「え?」
僕の急な提案に彼は驚く。
そして少し考えた後、またフッと笑う。
「歌とかはよく分かんねーな。ダンスなら、まぁ出来なくはねぇけど......」
「え!踊れるの!?」
僕は瞳を輝かせて、彼に近づく。
「お、おう」
「スゴいね!僕アイドル目指してるんだ!だからダンスが出来る人尊敬するよ!」
「アイドル......」
彼は小さく呟く。
その表情からは何を思っているのか分からなかった。
「......言ってたな......うん......ははっ......俺がそんなの......」
「......どうしたの?」
「前に言われたんだ。俺がアイドルになった姿を見たいって......」
彼の口から小さく聞こてきた言葉。
きっと空を見上げて想いを馳せている人がその言葉を伝えたのだろう。
その言葉を彼はどう受け止めているのだろう......。
「その言葉を聞いて、君はどう思った?」
「......その時は俺がアイドルなんて無理だって思った。でも何かをしたいって言わない子だったから......。だから俺に対してのコトでも、見たいって言ってくれたのは嬉しかったな.....」
彼が今どんな状況にいるかは分からない。
きっと悲しいコトもある。
それでも僕は彼を羨ましいと思った。
自分に期待してくれる存在が居るコトが羨ましかった。
「誰かから貰った言葉って良いよね。何年経っても心に残って、生き続けてくれる。思い出す度に自分を支えてくれるって思える」
「生き続ける......」
「君が忘れない限り、その言葉は、その言葉を送った人は心で生き続けてくれるって思うよ」
僕の言葉を聞いた彼の瞳から一筋の涙が溢れる。
「そっか......うん......」
そう呟いた後、彼は真剣な瞳で僕を見る。
「妹が望んでくれたからアイドルを目指すって言ったら笑うか?」
君の大切な人は妹だったのかと思った。
思ったのは、それだけだった。
「笑わないよ。君の大切な人がくれた希望は、君の目指す道になる。それが生きる希望になるのなら、そんなに素敵なコトはないって心から思うよ」
僕の言葉を聞いた彼はホッとしたような顔をした。
そしてまた優しい表情になる。
淋しくて迷っていた彼は進むべき道を見つけられたように思えた。
「ありがとう。俺、頑張るよ」
「うん。僕も頑張る。いつかお互いアイドルになって、また会えると良いね」
「あぁ、そうだな。今更だけど、名前は?」
「音成奏人っていいます」
「俺は巳波遙。今日は会えて良かった。ありがとう」
「うん。僕も遙と会えて良かった」
そして僕たちは別れたのだった。
そう言いながら僕は高台へ戻る。
上着を置き忘れたまま帰った僕は高台まで取りに戻った。
柵に掛けていた上着を見つけ、手に取り、家へ帰ろうとした時だった。
僕はさっきの男の子がまだベンチに座っているコトに気づいた。
僕はチラッと見た後、彼に近づき、声を掛ける。
「あの、大丈夫ですか?」
体調が悪く、座り続けているのではないだろうか。
そう思い、僕は彼に声を掛ける。
彼は驚いたように顔を上げ、僕を見る。
「あ......いや、大丈夫。なんでもない」
小さな声でそう答える。
顔色自体は悪くなく、体調が悪いという訳ではなさそうだった。
「大丈夫なら良いんだけど......」
なぜ彼がここに居続けるのかは分からなかった。
それでもこれ以上言葉を続けられない僕は、離れた方が良いと思った時だった。
「さっき、歌ってた人だよな......そこで......」
その言葉に僕は満面の笑みが溢れる。
「うん!聴いてくれてたの!?」
「あぁ......なんか、聴いてて心地よかったから」
そう言われ、僕は更に笑顔になる。
「そう言ってくれて嬉しい!ありがとう」
そう答えながら、僕は彼の瞳を見る。
その瞳は1週間前に会った女の子の瞳を思い出させた。
今目の前にいる彼の瞳は、あの女の子のように悲しみで揺れていた。
彼はボーッと空を見上げる。
僕も彼と同じように空を見上げる。
茜色に染まる空を綺麗だと僕は思った。
彼はどんな気持ちで空を見上げているのだろうか。
「あの空に行くにはどうしたら良いんだろうな」
彼は突如そう呟いた。
その言葉は僕への問いかけではないように思えた。
きっと心で思っていたコトが無意識に声となって僕に聞こえたのだろう。
それでも僕は彼の言葉に答えた。
「......パイロットになるとか?」
僕がそう言うと、彼はふっと笑った。
「そうだな、うん、確かに。でも俺は飛ぶだけじゃなくて、会いたいんだ......」
誰に?とは聞けなかった。
彼の瞳が涙で濡れているのが見えたから。
僕はまた空を見上げる。
「......会いたいと思うけど、どうしても会えない時ってあるよね。僕はそんな時、声を届けたいって思うんだ」
「声?」
「うん。僕はここに居る。ここで生きてる。だから君も頑張れって思いながら歌ってる。そしていつかテレビとか見て欲しい人に、見て貰える所で歌えたら良いなって思ってるんだ」
僕の言葉に彼は驚いた顔をした後、柔らかい表情になる。
「......カッコいいな......あんた......」
僕は彼を真っ直ぐ見つめる。
「精一杯歌えば、空にも声は届くって信じてる。その声はきっと届いて欲しい人に届くよ」
何の根拠もない言葉だ。
それでも僕は届くと信じている。
そう信じていると、目の前の彼に伝えたかった。
「そっか......うん......俺も届くと良いなって思うよ......」
彼はまた空を見上げる。
さっきよりも優しさで溢れた瞳を僕は綺麗だと思った。
「君も一緒に歌う?」
「え?」
僕の急な提案に彼は驚く。
そして少し考えた後、またフッと笑う。
「歌とかはよく分かんねーな。ダンスなら、まぁ出来なくはねぇけど......」
「え!踊れるの!?」
僕は瞳を輝かせて、彼に近づく。
「お、おう」
「スゴいね!僕アイドル目指してるんだ!だからダンスが出来る人尊敬するよ!」
「アイドル......」
彼は小さく呟く。
その表情からは何を思っているのか分からなかった。
「......言ってたな......うん......ははっ......俺がそんなの......」
「......どうしたの?」
「前に言われたんだ。俺がアイドルになった姿を見たいって......」
彼の口から小さく聞こてきた言葉。
きっと空を見上げて想いを馳せている人がその言葉を伝えたのだろう。
その言葉を彼はどう受け止めているのだろう......。
「その言葉を聞いて、君はどう思った?」
「......その時は俺がアイドルなんて無理だって思った。でも何かをしたいって言わない子だったから......。だから俺に対してのコトでも、見たいって言ってくれたのは嬉しかったな.....」
彼が今どんな状況にいるかは分からない。
きっと悲しいコトもある。
それでも僕は彼を羨ましいと思った。
自分に期待してくれる存在が居るコトが羨ましかった。
「誰かから貰った言葉って良いよね。何年経っても心に残って、生き続けてくれる。思い出す度に自分を支えてくれるって思える」
「生き続ける......」
「君が忘れない限り、その言葉は、その言葉を送った人は心で生き続けてくれるって思うよ」
僕の言葉を聞いた彼の瞳から一筋の涙が溢れる。
「そっか......うん......」
そう呟いた後、彼は真剣な瞳で僕を見る。
「妹が望んでくれたからアイドルを目指すって言ったら笑うか?」
君の大切な人は妹だったのかと思った。
思ったのは、それだけだった。
「笑わないよ。君の大切な人がくれた希望は、君の目指す道になる。それが生きる希望になるのなら、そんなに素敵なコトはないって心から思うよ」
僕の言葉を聞いた彼はホッとしたような顔をした。
そしてまた優しい表情になる。
淋しくて迷っていた彼は進むべき道を見つけられたように思えた。
「ありがとう。俺、頑張るよ」
「うん。僕も頑張る。いつかお互いアイドルになって、また会えると良いね」
「あぁ、そうだな。今更だけど、名前は?」
「音成奏人っていいます」
「俺は巳波遙。今日は会えて良かった。ありがとう」
「うん。僕も遙と会えて良かった」
そして僕たちは別れたのだった。



