ー現在ー

「お父さんが居なくなった時、救ってくれたのがカナトなんだ。私だけの大切な思い出だと思ってたのに、カナトもそのコト覚えてくれてたんだ。これってスゴく奇跡的だよね」
父はなんて答えてくれるだろうか。きっと優しく笑って「スゴく素敵だね」って言ってくれるんだろうな。
「今までも何度か落ち込んで、心が崩れそうになった。でもそんな時はお父さんの曲やカナトの曲を聴くんだ。そうしたら自然と頑張ろうって思えるの」
その時優しく風が吹いた。
父が私の傍に来てくれたのだろうか...なんてね。
「私ちゃんと生きるよ。お父さんが残した曲があるから。それに私を救ってくれたカナトがいるから。だから、大丈夫だよ」
私は立ち上がり、空を見上げる。
雲一つない綺麗な青空が広がっていた。
「じゃあ今日は帰るよ。またね」
私は父のお墓から離れていく。
父にカナトのコトを話して、改めて自分の気持ちが分かった。
私がどれだけカナトに救われたか。私にとってどれだけカナトが生きる希望か。
カナトは私に「僕をアイドルにしてくれてありがとう」と言ってくれた。でも私はカナトに救ってもらっただけ。
「泣いてる私を救ってくれた上に、そのコトが自分をアイドルにしてくれた。ありがとう...なんて...」
私はカナトの笑顔を思い浮かべる。
「本当...優しすぎるよ」
その言葉は誰にも届くコトはなく、風に吹かれて消えた。