絶交ゲーム

「雛ちゃん?」

「来ちゃった」


驚いた顔をしている浩二へ向けて私は照れ笑いを浮かべる。


「今日は豊は部活だよね? 1人で来てくれたんだ?」

「うん。顔を見たくなったから」


ベッドに近づくと浩二は嬉しそうに頬を緩めた。
その両足がすでにないことは布団の盛り上がり具合でわかった。

足があるはずの部分が凹んでいる。
私はそんことには触れずにカバンからクッキーを取り出した。

おばちゃんの手作りクッキーだ。


「そうだこれ、作ってきたの。甘いものが嫌いじゃなければ食べて」

「まじで? 手作り?」


浩二の目が丸くなる。
あれだけのファンを抱えているのだから、手作りクッキーの差し入れくらい嫌というほど食べてきたはずなのに。

そう思って首をかしげると浩二は眉を寄せて頭をかいた。


「実はこういうのを受け取るのは初めてなんだ」

「え、そうなの?」


驚いて聞き返す。