いい会社。
なにをもって『いい』と言っているのか全然わからない。


「そんなの、ただ有名大学へ行って有名企業に就職しろって言ってるだけじゃん……」

「その通りだ。わかってるならお父さんの言うとおりにしなさい」


ギリッと奥歯を噛み締めた。


「私は……進学も就職もしない! ゲームがあれば、なんだって手に入る!」


思わず、言ってしまった。
母親が驚いたように目を見開いている。


「ゲーム? 何の話をしてるんだ?」


父親は困惑顔だ。
ふたりは『絶交ゲーム』の存在を知らないから、戸惑っても当然だった。


「もしかしてプロゲーマーになるとか言うんじゃないでしょうね?」


母親の慌てた言葉に私はふっと吹き出した。
そんなんじゃない。

そんなんじゃないけれど、もう説明する気力も起きなかった。
どうせ私がなにを言ってもこの人達には届かない。


「とにかく、私は自分の道は自分で決めるから、もう口を出さないで!」


私はそう言ってほとんど手のつけていない夕飯をそのままに、自分の部屋に逃げ込んだのだった。