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家を出るとようやく深呼吸ができた。
5月の今は気候も良くて、花粉も終わって心地いい。

今年は受験受験と言われはじめて花見にも行くことができなかったから、学校までの通学路に咲いている花を見たり景色を楽しんだりすることが唯一の楽しみだった。

5月の連休にも結局祖母や祖父に会いに行ったくらいでなにもしなかった。


「いい大学にいい会社かぁ……」


歩きながら呟く。
父親の教育熱心は今に始まったことではない。

昔から勉強勉強と言うタイプの人で、小学校の頃から塾にも行っている。
だから今そこそこに進学校に通うことができているのだけれど、子供の頃から押さえつけられていたものは確実に存在していた。


「そんなの別に興味ないのになぁ」


ただ、自分のやりたいこととかなりたいものを見つけていないから、父親の言うように勉強をしているだけだ。
今後なにか目標ができればきっとそれも変わってくる。

そうなったときに、ちゃんと父親に説明することができるかどうか、自分でも不安だった。
なにせ今まで父親にそこまで反抗したことはない。

反抗すれば怒鳴られ、下手をすれば拳が飛んでくるからだ。