「ガンちゃん。探偵作戦は巧くいったと思うか」

俺はガンちゃんと下校しながら、訊ねた。

「ああ。でも、あんな結末になるとはな。もっと手の込んだトリックを期待していた。新月にまた動画配信するのかな」

「どうだろうな。そもそも『月の明かりのない新月にヴァンパイアが薔薇を枯らしにくる』設定は無理があるんだ。ヴァンパイアは新月に無力化して出歩かない」

「マジか!」

「ガンちゃん……椿のこと、まだ諦めてない?」

椿の涙を拭った日から、確認しておきたかった。

「俺はコクってふられたんだ。だから諦めはついている。椿には笑っていてほしいんだ」

ガンちゃんは穏やかに言って、目を伏せた。

自分自身の気持ちを落ち着かせ、納得させているように見えた。

「ガンちゃん。椿の笑顔、俺が守っていいか?」

椿の気持ちは知らない。

俺が勝手に、椿を守りたいだけだ。