柊くんの目は笑っていなかった。

凍りつきそうなくらい冷たい目だった。

「満月の夜に音もなく、鏡にも窓ガラスにも映らず現れるヴァンパイアの髪の色らしい」

「柊さん!?」

「今夜は十六夜(いざよい)だ。満月に1日欠ける月。もしかしたら、椿。君の目の前にいるのは、柊霞月というヴァンパイアかもしれない」

スッと、わたしの手に触れた柊くんの手は氷を触った後みたいに冷たかった。

柊くんの長い指は絆創膏だらけだった。

わたしが驚いてサッと手を引っ込めると、柊くんはクスッと笑い、続けて「あはは」と声を上げて笑いだした。