柊くんから園芸部が嘘をついていることを聞いた。

園芸部はスペアキーを持っている。

枯れた薔薇の謎が益々、気になった。

柊くんが時々、生徒会室の花瓶に薔薇を生ける。

傷みかけた薔薇や切り花用の薔薇など、日によって様々だ。

昨日は白薔薇を生けたはずなのに、今日見ると淡い青色に変わっていた。

「花瓶の中に青い食紅を溶かしたんだ」

「きれいね。青薔薇の花言葉は『奇跡』というんですって」

会計の先輩はそう言って、温室を見下ろした。

「ねえ、薔薇事件の薔薇は『奇跡』『不可能』どっちなの?」

「どちらでもないかな。昨日、監視カメラを観ていて怪しい場所を見つけたんだ」

柊くんは見取り図の赤ペンで記した箇所を指差した。

「昨日の夕方、園芸部の部長が温室に入っていった。新月に向けて、そろそろ準備を始める頃だと思った。薔薇の区画は此処から此処まで」

見取り図の上を指でなぞる。