「柊、また断ったのか。今日は2人目だな」

「断わる確率の方が高いのを知っていて、何でコクるんだろうな」

初めて知った相手、初めて話した相手と付き合おうと思えない。

「とりあえず付き合おうという気もないのか」

「ない」

俺は椿のことを考えていた。

紫陽花の花の前で、ふいに零れた椿の涙を思い出していた。

ガンちゃんが椿は生徒会に馴染めていないと、気にかけて、俺に何か策はないかとまで言ってきた相手だ。

ガンちゃんは椿のことをただの書記だとも、ただの後輩だとも思っていないのかもしれない。

ガンちゃんにはまだ、椿の涙を拭ったことは話していない。

話すべきなのかどうか、迷っていた。

生徒会室に行く前に、紫陽花を確かめようと思っている。

椿は熱湯をかけた結果が気になるなら、生徒会室に行く前にテラスハウス裏にくるはずだ。