新月に薔薇は枯れる(The rose dies at the new moon)ーー柊くんの隠しごと

「わたし…昨日、調べたんですけど、萎れた薔薇の茎を熱湯につけるとシャキンとするみたいです。でも、熱湯を雑草にかけると枯れてしまうんです」

「真逆の反応が起きると」

「で、質問なんですけど……植木に熱湯かけるとどうなるんですか?」

「いいね、やってみるか」

柊くんはニヤリと笑った。

「椿。ポットのお湯、沸騰してる?」

「沸かします」

急いで流し台に駆け寄り、ポットに水を入れた。

ポットの電源を入れる。

「おい、本当に試すつもりか?」

「ちょっと何処の植木に熱湯かけるつもり!?」

副会長と会計の先輩は鬼の形相で、柊くんとわたしの前に立ちはだかった。

「テラスハウスの裏にひっそり咲いている紫陽花があるだろ」

確かにテラスハウスの裏、誰も手入れをしないのに咲いている紫陽花がある。

紫陽花は雑草の如くしぶとく毎年、律儀に咲くのだと、卒業した旧生徒会書記の人が話していた。