椿は、わたしが勝手に残ったのにと遠慮したが強引に乗ってもらった。

「お前はさ、具合悪いのになんで言わないんだ? 倒れるまで何で」

ガンちゃんが低い声で俺をなじる。

「……今は聞きたくない」

椿が時々、後部座席を振り返った。

知られたくないと思った。

何も知られたくないと思った。

自分がどう噂されているのかは知っているのに、椿には何も知られたくないと思った。