「ガンちゃん、枯れた薔薇を実際に見せてもらえないのか?」

「そうだな。残っていればの話だよな」

ガーーーン、頭の中で絶望的な音が響いた。

噂と画像に捕らわれて、実際に枯れた薔薇を見た人物がいるかどうかを確認していない。

トリック云々よりも、先ずモノを見た人物がいるかどうかを確認するのが先だった。

そして枯れた薔薇を実際に観ることが先だった。

「ガンちゃん、ダメ元覚悟で園芸部にぶつかってみないか」

ガンちゃんに言いながら、振り出しの振り出し、未だ何も始まっていないんだ、と自分を鼓舞する。

6月半ば、梅雨まっただ中の湿気と雨と蒸し暑さは冷やしたローズティーごときで、すっきりできない。

雨降りで窓も開けられない生徒会室に、扇風機の申し訳程度の風。

副会長は制服の開襟シャツをはだけ、団扇で扇いでいた。

シックスパットばりに割れた腹筋がシャツの隙間からのぞかせている。