「ヴァンパイアはローズティーを好み、薔薇をブリザーブドフラワーのように鮮やかに枯らす」

ヴァンパイアの話を聞いた時、霞月の引っ掻き傷だらけの指を思い浮かべた。

霞月が新月の晩に、学校の温室に忍びこみ、薔薇を枯らす夢も見た。

霞月が1日4回服用するタブレット錠剤を見るたび、背筋が冷たくなる。

それほど、血の色のように赤いのだ。

俺は1年間の療養から帰ってきた霞月に会った時、薄茶色の髪が銀髪に変わっていたのを見て、一瞬、身構えてしまった。

会えた嬉しさよりも、ギョッとした。

気味が悪いと咄嗟に思ってしまった。

「この髪、気持ち悪いだろ? 向こうで治療している時、全部抜けて生え変わったら銀色になっていたんだ。薬のせいらしい」

霞月の穏やかで屈託のない笑顔が、俺の気味が悪いという気持ちを払拭させた。

霞月は変わっていない、この見た目は病気のせいなんだと、素直に思えた。