「やめて!離して!」

アミルを突き飛ばし、私は部屋を飛び出した。廊下は想像以上に長く、左右にはいくつものドアが並んでいる。

(玄関はどこ?)

十五分ほど迷い、ようやく玄関と思われる大きなドアを見つけた。私はホッとしてドアを押す。しかし、ドアは動かない。内開きなのかと引いてみてもダメだった。

「何で?何で開かないの?」

ガチャガチャとドアを鳴らしながら押したり引いたりしているうちに、アミルがやって来た。私の両手を掴んでドアから引き離した彼は、今まで見たことのない恍惚とした表情を浮かべている。

「この家のドアはね、僕の指紋と虹彩でしか開閉ができないようになってるんだ。だから美砂がここを出ようとしても無駄だよ」

「ふざけないで!私をここに閉じ込めておくつもり?仕事だってあるのに」

私は大声で怒鳴るものの、アミルは楽しそうに笑うだけだ。

「仕事ってホテルの仕事?それとも詐欺の仕事?」

「は?」

何故、彼がそれを知っているの?