椅子に座ったまま項垂れる。
両手首は背もたれの後ろで手錠をかけられ、足首はそれぞれ椅子の脚と繋がれていた。
その上、常に目隠しまでされるようになって、待遇は逆戻りどころか悪化した。
こんなの、まるで囚人みたい。
どうやったって逃げられないし、不自由を与える罰なのだろう。
だけど、食事は取り上げられなかった。
一日にコンビニのサンドイッチひとつというわびしいものではあるけれど。
(何でなんだろ……)
わたしが自暴自棄になって自ら死を選ぶのを危ぶんでいるのかな。
あるいは、痩せて拘束を抜け出すことを警戒しているのかもしれない。
(もう、どっちでもいいや)
少なくともいま、そんな力はない。
精神的にも身体的にも燃え尽きてしまっている。
あのときのことが何度も何度も蘇ってきた。
冷静に考えれば、あんなところに鞄なんて置いておくはずがない。
紛れもなく罠だ。
『……ちがうよ。俺はいつでも本気だった』
『芽依も俺のこと信じてくれるかなって、期待してたんだけどなぁ』
ぎゅう、と拳を握り締める。
(よく言うよ……)
わたしを痛めつけて黙らせる口実にしたかっただけのくせに。
いまさら彼に道理を説いて訴えても無意味だし、蔑んだところで気休めにしかならない。
最初から大人しく従っておくのが正解だったのかな。
それなら、少なくとも痛い思いや苦しい思いはせずに済んだし、そこそこの快適さは保証されていた。
いずれにしても、部屋の鍵を開ける手段がなくなったいま、自力での脱出は諦めて待つしかない。
誰かが見つけてくれることを。助けにきてくれることを。
(先生……)
目のふちに滲んだ涙が、真っ暗闇の中でも光ったような気がした。
────遠くで鍵とドアの音がした。
十和くんが帰ってきたんだ。
泥棒だったらよかったのに。
どんな形であれ、わたしを見つけてくれるなら。
そんな期待はあえなく砕け散った。
近づいてくる足音がいつもと同じだったから。
「ただいま、芽依」
「…………」
口をつぐんだまま無視した。
わざわざ彼と馴れ合う必要もないし、もう媚びる意味もない。
「寂しかった?」
す、と耳元に顔を寄せて囁かれた。
突然のことにびくりと肩が跳ねると、くす、と小さく彼が笑う。
「……かわいい。見えないと怖いよね。俺に何されるか分かんないもんね?」
反応を楽しんでいるようだった。
思わずうつむくと、きつく口を結んで耐える。



