「…………」
唇を噛む。
こんな危うい生活は続けられない。
俺の罪が明るみに出たとき、芽依を巻き込みたくない。
本当に彼女を想うなら、俺は自首するべきなんだろう。
罪は消えない。罰は免れない。
いままでしてきたことを考えれば、死で償っても足りないかもしれないけれど。
颯真への愛を貫いた結果がそれでも、間違っていたとは思わない。
だけど、法には逆らえないから。
何より怖いのは、芽依を失うことで訪れる孤独と、彼女を不幸にしてしまうこと。
俺にのしかかる孤独や罰は当然の報いなのだから、甘んじて受け入れるしかない。
(でも、芽依だけは……守らなきゃ)
毅然として顔を上げると、彼女の手を取った。
「警察行こ」
「え……っ」
その戸惑いに構わず、立ち上がってドアの方へ引っ張っていく。
こうするしかない。
ここに閉じ込め続けて芽依の未来を奪う権利なんて、俺にはないのだから。
「ま、待ってよ」
困惑する声が胸を刺す。
これも俺のエゴを押しつけているだけなのかもしれない。
この選択をするなら、もっと早くにするべきだったと悔やまれる。
そうしたら、気持ちを一度受け入れた上で突き放すなんて酷なことはしないで済んだのに。
負う傷も負わせる傷も、もっと浅く済んだはず。
余計な葛藤で心を煩わせることもなかった。
そもそも、俺が芽依をここへ連れてこなければ。
彼女の颯真への想いに気づかなければ。
彼女と出会わなければ。
(じゃなくて、もっと早く出会っていたら────)
「待って!」
ぐい、と芽依に押しとどめられて足が止まる。
振りほどこうと思えばできる。
力じゃ彼女は敵わないから。
だけど、そうしなかったのは、そうできなかったのはまた俺のエゴだ。
「わたしはこのままがいい」
迷いも不安もない言葉に、弾かれたように振り返る。
「……っ、俺は」
「分かってる! 分かってるよ、ぜんぶ」
芽依の声が泣きそうに震えた。
「十和くんは人を殺したんでしょ? いままで何回もこんなこと繰り返してるんでしょ? お兄さんのために」
「何で……」
颯真のためだった、と分かったんだろう。
「それしか考えられない。そうじゃなきゃ、わたしに明かす理由がないもん」
確かにそれもそうか。
すべては颯真のためだったのだと知らしめるために、兄弟だということをあのとき芽依に伝えた。
「わたしは……それが悪いことだったとは思わない」



