門の前で馬車を降り、中庭を歩いて行くんだけど、色とりどりの花が咲き乱れている。
 かなり歩かないと屋敷まで辿り着かないくらいに広い中庭なので、庭師さんたちが頑張っているんだろうな……と思いながら、屋敷の中へ。

「「「お帰りなさいませ」」」

 め、メイドさんだっ! しかも、大勢のメイドさんたちが、一切乱れる事なく、同じタイミングでエドワードを出迎えて……異世界、凄っ!
 というかエドワードって、どう考えても貴族よね?
 私が家にお邪魔して大丈夫なのかな?

「皆さん。こちらは僕の大切なお客様であるソフィアさんです。丁重におもてなしをお願い致します」
「はいっ! 畏まりました!」

 エドワードの言葉で、メイドさんが一斉に動き出す。
 う、動きが速いっ!
 決して走っている訳ではないのに、優雅さを残しつつも素早くメイドさんが散って行った。
 どうやったら、あんな風に動けるんだろ?

「ソフィアさん。僕は着替えてくるので、少しお待ちいただけますでしょうか」
「あ、うん。えっと……」
「ソフィア様。こちらへどうぞ」

 どこで待てば……と思ったら、すかさずメイドさんがやって来た。
 メイドさんに案内され、大きなお部屋に通される。

「ソフィア様。こちらで暫しお待ちくださいませ」
「わかりました」

 フカフカのソファーに腰掛け、日本の私の家のソファーよりも座り心地が良いな……というか、魔法学校の寮の部屋も十二分に凄くて、余裕で私の家より豪華なんだけどね。
 たぶん、学校長がエルフである私を特別視しているっぽいので、普通の生徒よりも待遇が良いのだと思う。
 広い個室に、大きなベッドとクローゼットがあって、勉強する為の立派な机と筆記具まで用意されていたからね。
 ただ、シャワールームに水が出る魔道具が設置されていたけど、使うのが怖くて自分で水魔法を使って汗を流したけど。
 ……と、至れり尽くせりって感じの寮なんだけど、この部屋だけで、その寮の一部屋と同じか、それ以上の広さと豪華さだったりする。

「ソフィア様。エドワード様がお戻りになられるまで、こちらをどうぞ」
「ありがとうございます」

 メイドさんが、紅茶とクッキーを出してくれて……ほんのり甘いっ!
 ちゃんとバターと砂糖が使われていて、でも甘すぎずにサクッとして、ほろほろと舌の上で溶けるような上品なクッキーだ!

「……うぅ」
「えぇっ!? そ、ソフィア様!? どうされましたか!? 何か私共に不手際が……」
「いえ、そうじゃないんです。こんなに美味しいクッキーは、久しぶりに……いえ、生まれて初めて食べたので。ありがとうございます。本当に美味しいです!」
「左様でございますか。こちらのクッキーは、当館のパティシエが作ったものですので、外で買う事が出来ません。よろしければ、お土産に包みましょうか?」
「さ、流石にそこまでしていただくと申し訳ないです。お、お気持ちだけで……」

 うぅ。この非売品のサクほろクッキー……正直言うと、家でも食べたい。
 でも、いきなり家に来て、お土産までお願いするなんて、大人としてどうかと。
 いやまぁ今の私は子供なんだけどさ。
 美味しいクッキーと、大人としての矜持に揺れていると、

「ソフィアさん。お待たせしました」

 普段着らしからぬ普段着に着替えてきたエドワードがやってきた。