こくっと私が素直に頷くと、はぁ……とため息をつく茉世ちゃん。


「あのね。ここ、月森(つきもり)学園は、人間と吸血鬼が通う特殊な学校なんだよ」

「えぇ!?」


うそ。初耳なんだけど。


「まさか、入学して1ヶ月経つのに知らなかったなんて。入学前に、学校のパンフレット見なかったの?」

「あー、全然見てないや。そもそもこの学校を選んだのも、家から一番近いっていう理由だし」

「まったく、しょうがないなぁ、亜実は……」


呆れながらも、茉世ちゃんはこの学園について色々と教えてくれた。


──かつて対立関係にあった人間と吸血鬼が共存する社会を作るため、この月森学園は創設された。

そしてこの学園に入学すると、1年以内に男女の人間と吸血鬼がペアとなり、とある契約を結ばなければならない。


とある契約……それは、専属契約だ。


人間と吸血鬼が契約したら、吸血鬼は契約した人間の血しか飲めなくなる。

反対に、人間も契約した吸血鬼以外に血をあげてはならない。


ちなみに、契約を結ぶ相手のことをこの学園では、“ 王子 ”、“ 姫 ” と呼ぶらしい。


なるほど。だからあの人、昨日私に姫とか言ってたんだ。


「ねぇ、茉世ちゃん。もし誰とも契約しなかったら、どうなるの?」