「おはよう、中城さん」

「おはよう、東くん」


先日の席替えで隣の席になってから、自然と東くんと話す機会が増えた。


「中城さん。この本、ありがとう。面白かったよ」

「えっ、もう読み終わったの!?」


東くんは私と同じで読書が趣味らしく、仲が深まるにつれて、私たちは本の貸し借りもするようになった。


「この分厚い小説を2日で読むなんて、凄いね」

「いやぁ、先が気になりすぎてさ。お陰で今日は寝不足だよ」


欠伸をする東くんの目元には、うっすらとクマができている。


「あっ、そうだ。中城さん、今日の放課後……」

「亜実ちゃん!!」


東くんが何か言いかけたが、教室にやって来た都輝くんによって遮られる。


「亜実ちゃん。昨日の弁当箱、返しにきた」

「えっ、わざわざ来てくれたの? 昼休みに会うときで良かったのに」

「俺が、亜実ちゃんに少しでも早く会いたかったからさ」


都輝くん。嬉しいけど、東くんもいる前で照れるなぁ。


「……ちっ。神山に邪魔された」


ボソッと呟いた東くんの声は、このときの私には聞こえなかった。