「俺、亜実ちゃんに襲いかかって怖い思いをさせたことがあるから。てっきり良く思われていないんだろうなと思ってたから。そんなふうに言ってもらえて嬉しくて」
「都輝くんのことは、嫌いじゃないよ」
少し強引なところもあるけれど。今日みたいにホチキス留めを手伝ってくれたりして、優しいところもあるし。
「えっ。嫌いじゃないってことはもしかして亜実ちゃん、俺のこと好きになってくれた?」
「す、好きにはなってません!」
もう、どうしてそうなるの!?
「なーんだ、残念。ていうか、そんな即答しなくても良いじゃん」
唇を尖らせる都輝くん。
「でも俺は亜実ちゃんのこと、ずっと変わらず好きだよ」
「えっ!」
都輝くんの突然の“ 好き ” に、自分でも頬が熱くなるのが分かる。
「ふはっ。亜実ちゃん、まーた顔赤くなってる」
伸びてきた長い指が、私の頬をすっと撫でる。
「そういうところ、ほんと可愛いなぁ」
見つめてくる彼の甘い表情から、目が離せなくなる。
「俺、亜実ちゃんのこと諦めないからね」
相手は、吸血鬼なのに。
都輝くんに好意を寄せられるのも、こうして触れられるのも不思議と嫌じゃない。
「俺はこの先、専属契約は亜実ちゃんとしか結ぶ気はないし。亜実ちゃんの血しか飲まないって決めたから。俺には、亜実ちゃんだけだよ」
どうしてだろう。
都輝くんにこんなふうに言ってもらえて、最近は嬉しいと思ってしまう自分がいる。
こんなの、変だ──。