えっ、口移しって冗談でしょう!?
神山くんの綺麗な顔が、止まることなくこちらへと迫ってくる。
「ダッ、ダメ……!」
急いでハンバーグを飲み下して、なんとか声を出す私。
「く、口移しなんて何を言ってるの! ていうか私たち、恋人同士じゃないから」
「ひどいなぁ。俺ら昨日、キスした仲じゃない」
「そっ、それはあなたが勝手に……!」
私の唇に、神山くんの人差し指が添えられる。
「“ あなた ” じゃなくて “ 都輝 ” だって、昨日言っただろ? ほら、呼んでみて」
「え? えっと。つ、つき……くん」
「よくできました」
都輝くんは嬉しそうに顔を崩し、まるでご褒美のように私の頭を撫でる。
彼のおひさまみたいな笑顔と触れた手に、不本意にも脈が速まってしまった。



