目を丸くする茉世ちゃんに、私は頷く。


「凄いじゃない、亜実。学年一のモテ男子である、あの神山くんに告白されただなんて」

「いっ、痛いよ茉世ちゃん」


興奮した茉世ちゃんが、私の背中をバシバシ叩いてくる。


「ごめん、つい。あのね、神山くんって数ある吸血鬼の家系の中でもトップの由緒ある家系でね。最強のヴァンパイアなんだよ」


最強の、ヴァンパイア……。


「そして、見てのとおり超イケメンで。その上、勉強も運動もできるから。彼の姫になりたいっていう女の子はいっぱいいるの」

「そうなの?」


最強とかなんとか、茉世ちゃんから神山くんについて力説されるもいまいちピンと来ない。


「それで? 亜実は神山くんとは専属契約したの?」

「それはもちろん、断っ……っんん」


否定しようとしたのに、私の口は神山くんの手によって塞がれてしまった。


「はにふるの(何するの)」

「昨日亜実ちゃんのこと、これからたくさん愛してあげるって言ったでしょ?」

「キャーッ」

「やだーっ」


神山くんの言葉とともに、教室の女子からは悲鳴が上がる。


「それじゃあ亜実ちゃん。行こうか」

「行くってどこに?」

「決まってるじゃない。ふたりきりになれるところだよ」