罪は流れて、雨粒にわらう




「宮くんが、そう言ってくれるならありがたいです」

「うん、それでさ。俺から佐山ちゃんに聞きたいことあるんだけど」

「……なんですか?」

「昨日のあれって、なに?」


 嫌な予感がすると薄々思っていた。先ほども彼は半分くらい言いかけていたし。
 できれば避けたかった話題だけれど、こんなに堂々と問われたらそれもできない。


「……貧血です」


 答えは用意してあった。
 この学校でPTSDのことを、教師以外に言う気がなかった私は、昨日のことも全部貧血で通すつもりだったのだ。


「ふーん。貧血、ね」
「私の場合はかなり重度のものなんです。ああやって倒れることはほとんどなかったんですけど、昨日は限界がしてしまって」


 本当のことを言えば、奇怪な目で見られるのは分かりきっている。
 だから貧血で押し通すと決めていた。


「いや、つーか昨日のあれ、PTSDなんだって?」


 あっけらかんとした顔でミヤケンが放った言葉に、私は耳を疑った。